自転車のヘルメット努力義務化がスタート!努力義務とは?違反に対する罰則とは?

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自転車のヘルメット努力義務化がスタート!努力義務とは?違反に対する罰則とは?

最近、頻繁にニュースや新聞などで報道されているもののひとつに「自転車のヘルメット努力義務化」があります。2023年4月1日から、道路交通法の改正により、自転車に乗る際のヘルメット着用が努力義務化されました。
サイクルショップだけでなくホームセンターでも購入できますが、人気の高いヘルメットは品薄状態です。

しかし、自転車に乗る人のなかには「自転車にヘルメットは子どもだけでよいのでは?」「スピードが出ない自転車でも必要?」「努力義務とは義務ではないの?」「ヘルメットがないと罰則に科せられるの?」といった疑問の声も聞かれます。
実際、ヘルメットの着用が努力義務であるにも関わらず、4月1日以降もヘルメットを着用している人は少数です。

この記事では、自転車のヘルメット努力義務の概要や違反に対する罰則、おすすめのヘルメットなどヘルメットの着用についてさまざまな視点から解説していきます。

自転車のヘルメット着用が努力義務となった背景

ここ数年、コロナウイルス感染症の影響もあり自転車による交通事故は減少しています。しかし、警視庁が令和3年2月に発表した「令和2年における交通事故の発生状況等について」に下記のような記述があります。

・自転車、自転車関連交通事故死者・重傷者数は減少しているが、対自動車事故のうち半数以上を占める出会い頭衝突事故では、自転車側にも約8割に法令違反がある。また、ヘルメット着用者率は小・中学生に改善傾向がみられるが、全体としては依然として低調しています。

この記述からもわかるように、自転車側の法令違反は増加傾向にあります。
それに加えて、ヘルメット非着用の自転車乗用中死者・負傷者の人身損傷主部位別比較では、自転車事故による死者の半数以上が頭部損傷によるものという調査報告が挙げられているのです。
ヘルメットの努力義務について児童や幼児が自転車に乗る際となっていました。

しかし、自転車乗車中の死傷者のうちヘルメット非着用者の割合が平成22年と令和2年では以下の結果となったのです。

年代別 平成22年 令和2年
小学生 82.6% 74.1%
中学生 72.7% 59.8%
高校生 95.5% 93.9%
65歳以上 96.5% 95.6%

4月の法改正では、.自転車事故による重大事故を防止する目的として年齢にかかわらず自転車利用者全員に適用されるようになったのです。

努力義務は義務ではない?

自転車におけるヘルメット着用は「努力義務」となっています。努力義務とは、法律用語の一つであり、義務の一形態です。一般的に、法律上の義務は「やらなければならないこと」であり、違反すれば罰則が課せられます。しかし、努力義務は、ある程度の努力を尽くすことが求められるが、必ずしも完全な成果を得ることが求められていない義務です。

例えば、運転免許取得後1年間は初心者マークの取り付けが義務付けられています。取り付けることで周囲に交通安全を確保するための規制を促すだけでなく、運転者が自分自身の能力を正しく把握し、周囲の交通環境に十分配慮した運転を行う義務を示さなければならないのです。
努力義務は法的に義務ですが、その程度や要求事項は個々の場合によって異なりますが、義務ではあるものの、完全な成果を保証することは求められないという特徴があります。

道路交通法第71条の5にある初心者マークの取り付けについて、記述の最後に「内閣府令で定めるところにより普通自動車の前面及び後面に内閣府令で定める様式の標識を付けないで普通自動車を運転してはならない。」とあります。
一方、自転車でのヘルメット着用についての道路交通法は以下の通りです。
道路交通法(令和5年4月1日以降)

自転車を運転するすべての人がヘルメットをかぶることに努めなければならないのはもちろんのこと、同乗する方にもヘルメットをかぶらせるように努めなければなりません。
また、保護者等の方は、児童や幼児が自転車を運転する際は、ヘルメットをかぶらせるよう努めなければなりません。

道路交通法 第63条の11
第1項
自転車の運転者は、乗車用ヘルメットをかぶるよう努めなければならない。
第2項
自転車の運転者は、他人を当該自転車に乗車させるときは、当該他人に乗車用ヘルメットをかぶらせるよう努めなければならない。
第3項
児童又は幼児を保護する責任のある者は、児童又は幼児が自転車を運転するときは、当該児童又は幼児に乗車用ヘルメットをかぶらせるよう努めなければならない。

つまり、努力義務とは、初心者マークの取り付けに記載された「しなければならない」ということではなく「努めなければならない」という意味であり、ヘルメットを着用するための努力を義務付けるという意味となるのです。

ヘルメット着用が義務ではなく努力義務なのか?

自転車ヘルメット着用について法改正となったにも関わらず、義務付けられていない理由には、以下のようなものが考えられます。

  • 1.自転車における死亡事故や重傷事故は交通事故の全体に占める割合が比較的低いため、必要性が薄いとされている。
  • 2.ヘルメット着用を義務化すると、自転車利用者が減少する恐れがあるため、自転車利用の促進が困難になるという選択肢がある。
  • 3.ヘルメット着用が義務化されたことを逆手に犯罪に利用される恐れがある。

ただし、自転車でのヘルメットの着用は、自身の安全性を高めるためにも推奨されています。に取り組むことが大切です。

ヘルメット未着用での罰則は?

初心者マークの取り付けは法律で義務と定められています。初心者マークは、自分が初心者であることを周囲に知らせるための標識です。
そのため、免許取得後1年未満の人が自動車運転の際、初心者マークを表示しない場合、道路交通法違反となり反則金、大型車(準中型のみ)6,000円、普通車 4,000円に加えて行政処分点数 1点が科せられます。

一方、自転車におけるヘルメットの着用は法的な義務ではあっても努力義務として推奨されているため、自転車でヘルメットを着用しなかった場合には、法的な罰則はありません。ただし、交通事故に遭った場合、ヘルメットを着用しなかったことにより、頭部などの重傷を負った場合、過失割合が増加することがあり、賠償金の責任を問われることがあります。

また、交通ルールを守らない自転車利用者には、交通規則として罰則にヘルメット未着用が加算される場合があります。

例えば、信号無視や車道の逆走、歩道走行などが挙げられます。
自転車でのヘルメットの着用は、自身の安全を守るためだけでなく、交通ルールの遵守や周囲への配慮も含めて、安全運転に備えるためにも必要です。

自転車のヘルメット着用率をあげるためには?

日本では、2023年4月1日の法改正以降、自転車のヘルメット着用率は一定の割合で向上しています。しかし、公道を自転車で走行している人でヘルメットを着用している人はまだ少数です。

他の国々と比べると、オーストラリアやニュージーランドなどでは、法的にヘルメット着用が義務付けられており、着用率も高いとされています。一方、ヨーロッパなどでは、ヘルメット着用率が比較的低い国が多く、義務化されていない国もあります。
自転車のヘルメット着用率を向上させるためには、普及啓発活動の充実や、ヘルメットのデザインや装着感の改善など、さまざまな視点での施策が求められるのです。

まとめ

自転車事故による死者の半数以上は頭部損傷によるものという調査報告が挙げられています。
この状況を打破するために、自転車のヘルメット着用が法改正によって自転車を利用するすべての人を対象に努力義務となりました。しかし、あくまで努力義務であるということから罰則があるわけではないため、個人の自己責任で遵守することが求められています。

自身を守るだけでなく、悲惨な事故を起こさないためにも、自転車を利用する際にはヘルメット着用が当たり前の行動になるように心がけていきましょう。

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