自転車保険の加入義務化とは?加入しないとどうなる?

自転車保険

近年、自転車と歩行者や自転車同士による交通事故が増えています。
これらの事故の原因は、自動車ほどの交通ルールが徹底されないことや自転車に対する道路整備が行き届いていないことに加えて、自転車の性能が高くなっていることで死亡事故に繋がっているケースもあるのです。
事故の相手への賠償や自身の治療費などを補償するため、自転車保険の加入を義務化する自治体も年々増加しています。

今回は、自転車保険の義務化についての背景や対象地域、罰則の有無、自転車保険に未加入の場合どうなるのか?といった自転車保険についての疑問について解説していきます。
この記事を参考に、自分に合った自転車保険の判断材料にしてください。

自転車事故の割合と事故のパターン

自転車による事故の割合は、全交通事故件数に対して2割超と高い水準で推移しています。
それに加えて、自転車乗用中の死傷者数は、20歳未満の若年層と65歳以上の高齢者層で約半数を占めているのです。

自転車が加害者となる事故を法令違反別にみると、最も多い違反が「安全運転義務違反」で全体の 60.1%に上り、半数を超えています。
続いて「一時不停止」「交差点安全進行義務違反」「信号無視」などの順となっています。

それでは、安全運転義務違反の内訳を見ていきましょう。

  • 安全不確認 :22.7%
  • ハンドル操作不適:13.7%
  • 前方不注意:7.7%
  • 動静不注視:5.4%
  • ブレーキ操作不適:2.8%
  • その他:7.9%

出典元:一般社団法人日本損害保険協会

「自転車だから大丈夫」という気持ちで安全運転を疎かにすれば、重大事故へ繋がる危険性は高くなるのです。

実際に起こった自転車事故とその賠償例

自転車を運転する際、安全運転を心がけるのは当たり前のことです。しかし、自転車は車やバイクと違い免許証が不要で、定期的な更新もなく運転が簡単で誰でも乗ることができます。
そのため、安全運転が疎かになってしまうこともあるのです。
一般社団法人日本損害保険協会では、実際に起こった自転車事故と賠償額が記載されています。

それでは、実際に起こった自転車事故の事例を挙げていきます。

自転車と歩行者の事故

男子小学生(11歳)が夜間、帰宅途中に自転車で走行中、歩道と車道の区別のない道路において歩行中の女性(62歳)と正面衝突。
女性は頭蓋骨骨折等の傷害を負い、意識が戻らない状態となった。
(神戸地方裁判所、平成25(2013)年7月4日判決)

この事故での判決認容額は、9,521万円となりました。
たとえ自転車の運転が未成年であったとしても、このような判決が言い渡されるのです。

自転車同士の事故

男子高校生が昼間、自転車横断帯のかなり手前の歩道から車道を斜めに横断し、対向車線を自転車で直進してきた男性会社員(24歳)と衝突。男性会社員に重大な障害(言語機能の喪失等)が残った。
(東京地方裁判所、平成20(2008)年6月5日判決)

この事故での判決認容額は、9,266万円となりました。
「自転車だから大丈夫」という気持ちで運転しているとこのような重大事故を起こしてしまうのです。

自転車保険に未加入で事故を起こしたらどうなるのか?

自転車事故による裁判で、高額の賠償金が発生する判例は少なくありません。
当然、自転車事故を起こして人や物を傷つければ賠償金を支払う義務が発生します。
これは、未成年の子どもが自転車事故を起こした場合でも同様です。
近年、自転車事故による裁判で数千万円もの高額な賠償額となるケースは増加しており、自転車保険に未加入であれば自分の資産から賠償金を支払わなければなりません。

自転車保険とはどのような保険?

自転車保険とは、自転車を運転している際に起こった事故に備えるための保険です。
自転車は、車やバイクなどのように運転するための免許が必要ありません。
そのため、老若男女問わず気軽に使える乗り物としてさまざまなシーンで利用者されています。その一方で、日本では法律で「車両」として車やバイクなどの乗り物と同じ扱いとなっているのです。

このような理由から、自転車で事故を起こせば過失割合を問われることになり、車やバイクなどの事故同様に賠償の義務が発生するのです。
自転車事故でも自分で支払うことができない賠償額に達することもあり、相手と自分を守るための保険として加入するものが自転車保険です。

自転車保険は、事故の相手や物の損傷を補償してくれる賠償保険と自分が負った怪我の補償をしてくれる傷害保険があります。

自転車保険の義務化が全国の自治体で加速している

自転車は、気軽に乗れる移動手段として利用されていますが、その裏ではさまざまな危険が潜んでいます。
自転車が起こす事故は、自分が怪我をするだけでなく、歩行者に怪我をさせ たり、物を壊したりすることも少なくありません。

男子高校生が昼間、対向車線を自転車で直進してきた男性会社員(24歳)と正面衝突した自転車事故では、男性会社員に言語機能の喪失が残りました。
判決では9,266万円の賠償金を支払うことが命じられましたが、この案件以外にも自転車事故による高額賠償請求は行われているのです。

加害者が自転車保険に未加入の場合、被害者が賠償請求をしても、ほとんどの加害者が全額支払うことは難しいのが現状です。
そのため、被害者は十分な補償を受けることができなくなります。その結果、事故後の生活に支障をきたす恐れもあるのです。
近年、自転車事故における被害者救済の観点から条例により自転車損害賠償責任保険等への加入を義務化をする自治体が増えています。

自転車損害賠償責任保険等への加入義務化の条例改正は、平成27年10月に初めて兵庫県で導入されました。
それに続いて、多くの地方自治体で義務化や努力義務とする条例が制定されています。
令和3年10月1日現在、34都道府県、2政令指定都市において条例により自転車損害賠償責任保険等への加入を義務づける条例が制定されました。

それでは、各地方自治体の自転車保険に関する制定状況について見ていきましょう。

項目 対象者 条例の種類 都道府県
自転車賠償責任保険への加入を義務付ける 自転車利用者 左記の事項を義務としている
(31ヶ所)
宮城県・ 秋田県・ 山形県・ 福島県・ 栃木県 ・群馬県 ・埼玉県 ・千葉県 ・東京都 ・神奈川県・ 山梨県・ 長野県 ・新潟県 福井県・ 静岡県・ 岐阜県 愛知県・ 三重県・ 滋賀県 京都府
・大阪府 ・兵庫県 奈良県 ・香川県 ・愛媛県 福岡県 ・熊本県 ・大分県 宮崎県 ・鹿児島県・岡山県岡山市(政令都市)
保護者
事業者
自転車貸付事業者
自転車賠償責任保険への加入を確認する 自転車小売事業者
事業者
自転車貸付事業者 左記の事項を努力義務としている(9ヶ所) 北海道 ・青森県 ・茨城県 ・富山県 ・和歌山県・ 鳥取県 ・徳島県 ・高知県・ 佐賀県
自転車賠償責任保険の情報を提供する 都道府県
学校関係者

このように多くの自治体が義務としていますが、義務化されている都道府県や政令都市で自転車保険に加入しなかったとしても罰則規定を定めている自治体は現在のところありません。

自転車保険への加入方法

自転車保険は、購入した場所でも加入できますが、インターネットやコンビニで手続きをすることができます。インターネットやコンビニであれば、24時間受付してもらえるため、自分の空いた時間に手続きが可能です。
注意する点として、コンビニや購入先などではそのお店が提携している保険会社の自転車保険しか契約できません。
手続きに必要なものは、保険料のみです。
しかし、手続きをするところや加入する保険会社によっては、クレジットカード払い限定ということもありますので、事前に調べておくとスムーズに手続きが行えます。

自転車保険の選び方

自転車保険は、さまざまな保険会社が取り扱っています。
保険会社によって補償範囲やサービス内容なども違うため、どこまで補償してもらえるのか?サービス内容に示談交渉は含まれているか?という点などについて把握しておくことが重要です。
それでは、自転車保険を選ぶ基準を挙げていきます。

対人対物補償が十分な内容である

自転車保険で、最も重要な点は相手の人や物への補償が満たされているかと言う点です。
たとえ自転車であっても、他人に怪我を負わせてしまったり死亡させてしまったりした場合には、多額の賠償請求を命じられます。
その際、被害者側にしっかり補償できるようにしておきましょう。

自身の怪我の補償をどこまでするのか

自転車保険では、自身が負った怪我に対してどこまで備えるかにより保険料に差が出るのは必須です。
当然ですが、補償額が大きくなるほど保険料も高くなります。
補償を限られた範囲にするのか、手厚くするかによって、通院時や入院時の補償額や死亡補償の額など大きくなっています。

二重で加入していないのか

自転車で他人や他物に損傷を与えた場合には、ß個人賠償責任保険が適用されます。
個人賠償責任保険は、自動車保険や火災保険などの特約として加入することが可能です。
同居の親族が加入していても適用されるため、あえて自転車保険に加入する必要はありません。

まとめ

自転車保険への加入を義務化する自治体が増えている背景には、自転車事故で高額の損害賠償を請求されるケースが増えていることが挙げられます。
自転車保険を選ぶ際には、相手への賠償額の上限や自分の怪我に対する補償、他の保険と重複がないかを確認したうえで加入することをおすすめします。
なにより、自転車に乗る際は、他人に怪我をさせる、財物を壊す(損害を与える) 、自分が怪我をするというリスクが伴うことを認識して事故を起こさないよう安全運転を心がけましょう。

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